地域に寄り添う商店街の挑戦。世代交代しながら住民と共に地域活性化に取り組む「ぶんじハロウィン」

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【国分寺駅北口商店街】荒井大介さん

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国分寺にある商店街とは?

国分寺市内には、JR中央線と西武鉄道の2社3路線が乗り入れる国分寺駅の他にも、JR中央線・武蔵野線西国分寺駅、JR中央線国立駅、西武国分寺線恋ヶ窪駅と多くの駅があり、それぞれの駅前にある商店街が地域を盛り上げるため、さまざまな取り組みを行っています。今回は、その中から、親の代から思いを受け継ぎ、住民と共に国分寺駅北口商店街を盛り上げる国分寺駅北口商店街 副会長・荒井大介さんに同商店街の取り組みを聞きました。

まちの様子が変わっても、人々の絆は変わらない。

昭和中期頃の国分寺駅前は、学生や働く人たちのお腹を満たす食堂や威勢の良い声を上げる八百屋、映画館やボウリング場などの娯楽施設、そして日も明るいうちから煙をモクモクと立たせる飲み屋など、今以上に多くの商店が所狭しと軒を連ねていました。

1958(昭和33)年頃の国分寺駅周辺の様子。

そんな古き良き昭和の時代を経て、半世紀以上もの年月をかけて駅前開発事業が行われてきた国分寺駅前。2018(平成30)年の春には駅直結の2つの再開発ビルが完成し、多くの人が行き交う駅前ロータリーも整備されました。その駅北口前ロータリーを包むように、加盟店が並ぶのが「国分寺駅北口商店街」です。

2012年頃、国分寺駅直結のビル屋上から北側を撮影した街並み。

国分寺駅北口商店街は、北口の再開発が行われる前からあった8つの商店会のうち5つが合併して生まれた任意団体。日本全国さまざまな土地で叫ばれる‟担い手不足“や、駅前商店のナショナルブランド化の影響があり、「範囲と人を増やしてみんなで一緒にやっていこう」と、令和2年度に誕生しました。

親の代と次世代とのハブになり、国分寺駅北口を盛り上げる立役者。

若い頃はデザイン関係の仕事に就いて都心へ通勤、家には寝に帰るだけの生活を送っていたという荒井さん。しかし父親が商店街の活動をしており、その仲間もみんな父親の先輩・後輩、近くにある親しい店の人も誰かしらの先輩・後輩というつながりの中にいたため、26歳で父親の建設会社に入社し、40歳で2代目として会社を切り盛りしながら自らも商店街の活動に尽力することは自然の流れだったと話します。

現在はバスターミナルとなっている場所の西側(本町3-4付近)の様子。

荒井さん:「子どもの頃から商店街で活動する人のことは知っていましたが、父の世代ばかりで若い衆が全然いないことも分かっていました。‟大ちゃんと同じ年の人たちを商店街の活動に巻き込めないか“。そう周りから言われたこともあって、26歳から商店街の活動を始めました。そして、全商店会みんなで力を合わせて一緒のことをやろうというイベントの立ち上げが商店会の合併につながり、国分寺駅北口商店街発足のきっかけとなりました。そのイベントが2013(平成25)年に第1回目を実施した『ぶんじマルシェ』です」

過去に開催してきた、たくさんのイベントチラシ。

それぞれの商店会が資金と人員を出し合い、地域のPTAや学生たちも巻き込んで開催された「ぶんじマルシェ」。そしてそこからさまざまな事業が生まれ、一時期は1年に5つものイベントを企画・運営していたそうです。

ぶんじマルシェについてはこちら
https://bunjimarche.com/

荒井さん:「ぶんじマルシェの事業のひとつ『ぶんザニア』は、まちの商店の中で子どもたちに実務体験をしてもらう社会貢献型プログラムイベントとして立ち上げました。先着順で参加者を募ったところ500人もの子どもが集まり、ニュースにも取り上げられて大きな反響を呼びました。商店街の優れた取り組みを表彰・紹介する、第12回東京商店街グランプリ(東京都産業労働局主催)では、準グランプリを獲得することができました」

ぶんザニアについてはこちら
https://bunjimarche.com/%E3%81%B6%E3%82%93%E3%82%B6%E3%83%8B%E3%82%A2/

令和5(2023)年に実施された「第12回東京商店街グランプリ」表彰式の様子。

小売業や消防署、警察署など30を超える仕事を体験できる「ぶんザニア」は、企画段階から地域の学生たちに手伝ってもらうなど、商店街の垣根を越えて開催されました。仕事体験をした子どもたちはイベント通貨「ぶんゾ」を受け取り、当日の縁日で遊ぶことができる仕組みを通して、消費活動に至る循環経済を楽しみながら体験学習。働くことの意味を考え、商店街ではさまざまな業種で働く人がいることを、身をもって覚えることにつながったといいます。

荒井さん:「他にも連雀通り沿いにある祥應寺で行う『ぶんじ花まつり』など、さまざまなイベントがありますが、すべて同じ人たちで運営しているので、より多くの人に携わっていただき、それぞれに特色を出していきたいと思っています。そして、これからは若い人たちもどんどん増やしていかなければならないと思っています」

そう話す荒井さんの活動のひとつが、商店会以外での活動。国分寺市にある東京経済大学経済学部では‟商業活性化と地域再生”について講義をしたこともあるそうです。

荒井さん:「地域に根ざした活動に携わりたい学生が多いので、結構厳しい質問が飛んでくることもあります(笑)。でも、そうした若い人と接していると、ボランティアやまちの活動に積極的に携わっていきたい人が増えていることを実感できます。できることなら活動を通じて国分寺に愛着を持ってもらい、将来的に住む選択肢のひとつになれば嬉しいですね」

東京経済大学の講義にゲスト講師として登壇した際の様子。

東京経済大学の学生によるまちの清掃活動、グリーンプライド。

商店街活動をしてきた荒井さんだからこそ分かる、国分寺の魅力とは?

ぶんじマルシェ実行委員会がかつて開催したイベントのひとつに、年々参加店舗が増えた人気イベント「ぶんじバル」があります。「ぶんじバルチケット」を購入し、国分寺駅周辺にある飲食店の「バルメニュー」で食べ歩き・飲み歩きを楽しむというもの。知らない店に入りづらいと感じる人にも店の魅力に気付いてもらうことができるイベントとして大いに賑わいを見せました。

ぶんじバルについてはこちら
https://bunjimarche.com/category/bar/

2016年に開催した「第5回ぶんじバル」の様子。

荒井さん:「国分寺は都心で働く人のベッドタウン的な立ち位置があります。そのため新しく入ってくる人が多く、まちにそれほど愛着の無い方が一定数いることも感じています。そういった方たちともイベントなら気軽にコミュニケーションを取ることができ、まちのことも知ってもらえます。地域の人やお店のことをもっと知ってもらいたい―そんな思いでイベントを行っています」

市内外の人たちと多く接してきた荒井さんだからこそ感じる国分寺の魅力のひとつが、新旧住民に関係ないフレンドリーな関係性だといいます。

荒井さん:「私もおじいさんがここに住んで3代目なのでまだまだ新参者ですが、田舎にありがちな疎外感はまったくありません。町会ごとに持っている祭りの神輿も、新しく移り住んだ人でも‟担ぎたい“と言えば担ぐことができるオープンさです。新旧が上手く融合しているまちであり、商店街にはたくさんの店があるので、どこかしらで自分の居場所を見つけられるのが国分寺です。初めて来た方も、一見入りづらいなと思う店でも怖がらずに入ってもらえたら、居心地の良さを感じてもらうことができると思います」

取材中、近くの店の前を通りかかり、店主と談笑を始める荒井さん(右)。あたたかい人のつながりを感じられるワンシーン。

商店街以外も巻き込み、地域で盛り上げる「ぶんじハロウィン」

今も続いているイベントのひとつに、毎年秋に開催される「ぶんじハロウィン」があります。2025年は10月26日(日)の開催が決定しました。

ぶんじハロウィンについてはこちら
https://bunjihalloween.com/

2016年に開催された「第3回ぶんじハロウィン」の様子。

「第3回ぶんじハロウィン」で行われた「ぶんじキッズ仮装コンテスト」の様子。

荒井さん:「コロナになってイベントが開催できない時期が2~3年続いた間に、商売を止められた方や参加を止めた方が増えたので、一時は存続が危ぶまれたこともあったのですが、ぶんじハロウィンは国分寺駅北口商店街以外の人も手伝ってくれているので、できる限り続けていこうと思っています。国分寺駅周辺にある各チェックポイントでスタンプを集めることで、商店街にある店の手作りお菓子がもらえる『お菓子スタンプラリー』や仮装コンテスト、学生によるワークショップなど、さまざまな取り組みを行っているので、ぜひ気軽に遊びにきてほしいですね」

お菓子スタンプラリーでは、商店街の手作りお菓子をプレゼント。

運営側も楽しみながら来場者を迎えていることが分かるあたたかいイベント。

そして、荒井さんは「ぶんじハロウィン」を子どもだけではなく、大人も楽しめるようなイベントに発展させていきたいと展望を語ります。

参加者も商店の人たちも一緒になって楽しむ「ぶんじハロウィン」。

荒井さん:「国分寺は学生のまちのイメージが強いのですが、今後は大人のまちとしてもPRしていきたいですね。国分寺駅前に限らず、西国分寺駅や国立駅など、範囲を広げて駅ごとの特徴を出し、スタンプラリーやバルイベントを連携して実施できたらいいなと思っています」

昭和30年代に荒井さんの父親世代が始めた商店街活動も、今はその子どもたち、荒井さん世代が中心となって活動を行っている国分寺駅北口商店街。

コロナで一時期は落ちてしまった気持ちや離れてしまった人がいる一方で、今一度、横のつながりを固めて、地域の商売が好転する仕掛けを生み出したい。そして1年中どこかしら何かをやっているまち国分寺をPRして、たくさんの方を市内外から呼びたい。未来に向けてそう意気込む荒井さんのような人たちが市内の商店街を支えているからこそ、国分寺の商店街はいつ訪れても面白いのです。

スポット等詳細情報

国分寺駅北口商店街URL:https://x.com/kokubunji_kitag

問い合わせ
第9回ぶんじハロウィン
会場:国分寺駅周辺
受付:国分寺駅北口駅前広場
URL:https://bunjihalloween.com/

 

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