【歴史散歩】温故知新の“黄金ルート”を歩いて日本と国分寺市の歴史に触れる

まちあるき

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約1300年前に存在した寺院や武蔵国の歴史を知る

国分寺市の名前は、奈良時代に武蔵国に建立された「武蔵国分寺」に由来します。そんな由緒正しい歴史のまちを歩くなら、武蔵国分寺跡を中心とした黄金ルートがおすすめ。文化財愛護ボランティアによる史跡ガイドを申し込めば、当時を偲びながら歩くことができます(申し込み等は記事の最後で紹介)。

まず、ガイドと一緒に簡単に歴史を振り返ってみましょう。
奈良時代、第45代聖武天皇(しょうむてんのう)は災害や飢饉、政治の混乱や疫病など社会情勢の不安を仏の力を借りて解決しようと考え、諸国に国分寺の建立を命じました。この天平13年(741年)の「国分寺建立の詔(みことのり)」により、全国60余りの国に国分寺(僧寺と尼寺)が建立されました。

武蔵国分寺が建立された跡に立てられている石碑

現在の東京都、埼玉県、神奈川県の川崎市・横浜市の一部はかつて「武蔵国」と呼ばれていました。府中市に国府があったこと、上野国と武蔵国府を結ぶ東山道武蔵路(とうさんどうむさしみち)があり交通の便が良かったこと、風水における好適地“四神相応の地”(※)であったことから重要な寺を建立するにふさわしい地であると選ばれ建てられたのが「武蔵国分寺」です。

(※)国分寺の場合は、東には野川が流れる地、南には立川段丘面の平地、西には東山道武蔵路、北には国分寺崖線段丘崖

現在、国分寺市役所が建つ向いに整備された幅12m・長さ約350mの東山道武蔵路跡。黄色の部分は実際に発見された側溝の跡を表現。東山道武蔵路跡は平成22年(2010年)に国の史跡として追加指定されました

詳しい歴史はこちら

武蔵国分寺の歴史-古代ロマンとその深淵-

発掘調査成果と史跡の重要性を伝える「武蔵国分寺跡資料館」

最初に訪れたいのは平成21年(2009年)におたかの道湧水園内に開館した「見る」「学ぶ」「訪ねる」をコンセプトにした資料館。主に史跡武蔵国分寺跡から出土した資料を展示し、これまでの発掘調査の成果や市内の文化財、武蔵国分寺跡の保存整備事業などを紹介しています。

建物に入って正面に展示されている武蔵国分寺の推定復元模型。北に国分寺崖線(こくぶんじがいせん)、西に東山道武蔵路、東に旧野川が流れていくことが分かる

東山道武蔵路跡付近の道路状遺構から発見された都指定有形文化財の「銅造観世音菩薩立像」

国内最古級の旧石器や縄文時代中期の土偶など貴重な資料を展示している

国分寺市の歴史を辿る散歩を楽しむのなら、先人たちが残した貴重な資料を守り後世へ受け継いでいくために欠かせない資料館からスタートするのがおすすめです。

スポット等詳細情報

武蔵国分寺跡資料館

国分寺市の市名の由来となった史跡「武蔵国分寺跡」と「七重塔跡」

武蔵国分寺跡資料館から約300m・徒歩5分ほどの場所にあるのが、広大な敷地に建物の基壇や礎石、区画溝などが復元表示された「武蔵国分寺跡」です。ここは史蹟名勝天然紀念物保存法により大正11年(1922年)に国の史蹟(史跡)に指定されました。これまでに11回の追加指定を受け、府中市域の参道口を含め、165,000㎡を超える広大な範囲に広がっています。

仏像を安置する建物「金堂」跡

寺院や関連する集落が広がる東西2㎞、南北1.5㎞に及ぶ範囲が寺地と推定されている武蔵国分寺。東山道武蔵路を挟んで東側に僧寺(そうじ)、西側に尼寺(にじ)が配置されていました。

南北に金堂と講堂(経典などの講義を行う建物)、東西に僧坊(僧が起居する建物)が配されていたことを伝える案内板。写真左下に記されているのが尼寺の跡

春の講堂跡はお花見スポットとしても人気

基壇の上面を塼(せん)敷で復元した金堂跡。案内人は国分寺市史跡ガイドボランティア

金堂跡から南東に歩くと現れるのが七重塔跡です。塔には、国を守るため金字で書かれた「金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)」が納められ、高さ60mほどあったと考えられています。遠くからでも見えるシンボルとして、当時、類を見ない巨大建造物だったことでしょう。また、『続日本後記』の記述や発掘調査により、雷が落ちて焼失し、十数年後に再建されたことが分かっています。

七重塔が建っていた場所。大きな礎石が残る

おたかの道湧水園にある七重塔推定復元模型(10分の1)

東山道武蔵路跡を越えた西側、「武蔵国分尼寺跡」へはかなりの距離になりますが、スケールの大きさを体感しながら、足を延ばすのもおすすめです。尼寺跡は金堂の基壇版築を観察できる施設や尼坊のほか、儀式などの際に装飾として用いる幡(ばん)を吊り下げる幢竿(どうかん)や伽藍の中枢部を囲う掘立柱塀が復元されています。ぜひ訪れてみてください。

スポット等詳細情報

武蔵国分寺跡 

 

聖武天皇の詔により創建された「武蔵国分寺」周辺

国の安寧にとって重要であった武蔵国分寺跡の歴史に触れたら、周辺に建立された寺にもぜひお立ち寄りを。「国分寺薬師堂」(市重要有形文化財)は建武2年(1335年)に新田義貞(にったよしさだ)の寄進により国分僧寺の金堂跡付近に建立されたと伝わるお堂です。現在は、例年10月10日に国指定重要文化財の木造薬師如来坐像の御開帳が行われています。

現在の薬師堂は宝暦年間(1751年から1764年)に現在の場所に建て替えられたと考えられている

境内には札所の番号や詠歌などが刻まれた四国八十八ヵ所を模した石仏が並ぶ

迫力ある阿吽像が安置された「国分寺仁王門」(市重要有形文化財)なども見ることができるのでチェックしてみてください。

石の形に合わせて柱を削って建てた様子が分かる

また、季節ごとに変わる風景を楽しみに地元の方々の憩いの場にもなっている「万葉植物園(万葉庭園)」も合わせて立ち寄ってほしいスポットのひとつ。昭和25年(1950年)から13年をかけ、当時の住職が「万葉集」に詠まれている植物を収集して境内に造園しました。

昭和60年(1985年)に改築された現在の本堂

住職が地道に独力で採集して育て、植物ごとに札を立て整備した「万葉植物園(万葉庭園)」には約160種類もの万葉集関連の植物があり、国分寺市の重要天然記念物に指定されています。

現存する日本最古の歌集「万葉集」に出てくる植物ごとに札が立てられている

武蔵国分寺が創建された時代を生きた人々が植物に心を託し詠んだ草木を見ることができる「万葉植物園(万葉庭園)」を訪れ、往時を偲ぶひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

スポット等詳細情報

武蔵國分寺

名水百選に選ばれた「お鷹の道・真姿の池湧水群」

国分寺市民が口を揃えて「国分寺市観光一番のおすすめ!」と話すのが、実はこちらの「お鷹の道・真姿(ますがた)の池湧水群」。国分寺崖線のハケのひとつにあり、周辺にはケヤキ、イヌシデ、スギ、コナラなどが多く見られ、古くからの雑木林景観が保存されている地域です。「お鷹の道・真姿の池湧水群」は都の指定名勝に指定されています。

真姿の池。水は清らかで透明度が高く、鯉が泳ぐ姿も見られる(真姿の池弁財天 管理:糸萬園)

「真姿の池」は嘉祥(かしょう)元年(848年)に不治の病に苦しむ絶世の美女・玉造小町が、病気平癒祈願のために国分寺を訪れて21日間参詣すると、現れた一人の童子から池で身を清めるよう霊示を受けて快癒し、元の美しい姿に戻ったことに由来しています。

国分寺崖線から湧出した水は真姿の池を経由し、野川の支流のひとつ元町用水へ。用水路はお鷹の道に沿って流れており、都市の中の貴重な親水空間として親しまれている

江戸時代に尾張徳川家の御鷹場(※)に指定されていたことに由来する「お鷹の道」は、約350mが遊歩道として整備されています。沿道には春から初夏にかけてカラーの花をはじめとする四季折々の植物やホタルなどが華を添え、のんびりと穏やかな気持ちで過ごせる、癒しの空間が広がっています。

(※)将軍家や徳川御三家などの権力者が鷹狩りを目的とした場所

スポット等詳細情報

真姿の池湧水群

経験豊かな史跡ガイドの案内で国分寺を巡ろう

国分寺市史跡ガイドボランティアが案内できるコース(2025年4月現在)は、武蔵国分寺跡を基本とした4種類(所用時間約75分・1.2kmから、約125分・3.0kmのコースまであり)。

国分寺市史跡ガイドボランティア。ガイドを申し込むと武蔵国分寺跡資料館の案内も行ってくれる

経験豊富なボランティアが武蔵野の豊かな自然と武蔵国分寺の歴史について解説を交えながらガイドしてくれます。スタートはお鷹の道沿いにある「史跡の駅 おたカフェ」か「西国分寺駅」(いずみホール前)のどちらかを選ぶことができます。

ハンドドリップコーヒーやケーキ、 “こくベジ”を使用したカレーなどが楽しめる、無料休憩施設「史跡の駅 おたカフェ」

「武蔵国分寺の専門的内容が知りたい」「基礎的な解説を受けたい」「自然や地形などの情報をメインにしてほしい」など好みによってリクエストも可能。予約は3カ月前から1カ月前まで受け付けていますので、ぜひ気軽に「史跡の駅 おたカフェ」まで問い合わせを。今まで国分寺市を訪れたことがある方でも、きっと新たな発見や歴史の面白さに気づくはずです。

スポット等詳細情報

国分寺市ふるさと文化財愛護ボランティア史跡ガイド

実施日:おたかの道湧水園の開園日/月曜休(祝日・振休の場合は翌日)、年末年始休。
時間:10:00~16:00
ガイド料:無料
予約・問い合わせ:042-312-2878(史跡の駅 おたカフェ)
※要事前申し込み

【コース】
①朱雀【 所要時間 約 75 分/約 1.2km 】 史跡武蔵国分寺僧寺跡と周辺の文化財の見学
②青龍【 所要時間 約 90 分/約 1.5km 】 史跡武蔵国分僧寺跡と周辺の文化財、 真姿の池の見学
③玄武【所要時間 約110 分/約 2.5km 】 史跡武蔵国分僧寺跡と周辺の文化財、 東山道武蔵路の見学
④白虎 【所要時間 約125分/約 3.0km 】史跡武蔵国分僧寺跡と周辺の文化財、 尼寺跡・伝鎌倉街道などの見学

集合地点: ①~④共通で史跡の駅 おたカフェ
解散地点: ①・② 史跡の駅 おたカフェ、③・④ 西国分寺駅

スポット等詳細情報

史跡の駅 おたカフェ

 

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