まちをフィールドに“学びと活動”をつなげるコミュニティ「こくぶんじカレッジ」

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【マルイス】萩原修さん

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まちを面白くするために行動し“まちの自分ごと化”を醸成する“こくカレ”

昨今、どのまちでも重要性が叫ばれている魅力的な“まちづくり”。多様な人材との出会いや交流によるイノベーション創出、地域特有の魅力を見つけ出して最大限に活かすことが重要だといわれていますが、主に休日や夜を過ごす“住むまち”と、多くの時間を過ごす“働くまち”が異なることで、実は「自分のまちのことをよく知らない」「どのように自分のまちと関われば良いのかが分からない」という人も多いのでは。

そんな現状がある中、国分寺では「くらす・まち・うごく」をテーマにまちで活動する人をサポートする、さまざまなプログラムを展開する事業者(NPOマルイス)と協働事業を行い、市民からのボトムアップで生まれる新しいプロジェクトで、活気あふれるまちづくりが行われています。

その中心となっているのが、今回ご紹介する「こくぶんじカレッジ」、通称「こくカレ」です。

こくカレを運営するNPOマルイス代表理事・萩原修さん

「こくカレ」は“まちを自分ごと”にするための全7回の講座。国分寺にある空間、コミュニケーション、商い、食、農、環境、景観、音楽、アート、スポーツ、教育、福祉、建築…などをテーマに、自分のやりたいこと、できることを、やれる時間を使って活動するための学びとコミュニティが生まれる場として毎年開催されています。

こくカレ開催の様子

こくカレに集まる人たちは、年齢も立場も居住地域もさまざま。講座の1回目はオリエンテーションと自己紹介、まちづくりに携わるゲストによるトーク。2回目は、これまでにこくカレから生まれたプロジェクトを先輩から聞くなど、まずは国分寺を知るところから始めていきます。

そして3回目以降はやりたいことが重なっている人同士でチームを作り、国分寺のまちを楽しくするプロジェクトをグループワークで企画。その後の講座では、こくカレ出身者や、まちで楽しい仕掛けをされている講師陣から伝え方やアイデアを整理するスキルを学ぶことで企画を具現化して実践します。

グループワークと発表の様子

何気なく見ている普段の風景や自分の周りにある困りごと、家庭や仕事での気づきなど、プロジェクトの発端は多種多様。今まで行われた活動や、こくカレから生まれたプロジェクトにはどのようなものがあるのか?こくカレを通じて発信する国分寺の面白さとは?こくカレの運営に携わるNPOマルイス代表理事の萩原修さんに話を聞きました。

東京の郊外ならではのメリットを活かした活動

萩原さんは東京都国分寺市で育ち。武蔵野美術大学を卒業後、大手印刷会社や住まいづくりの情報センターでの勤務を経て独立。現在は明星大学デザイン学部の教授としてソーシャルデザインなどの授業を受け持っています。多摩地域を中心に、様々なプロジェクトや拠点を企画・運営。地域の様々な人たちと連携して、東京の郊外住宅地を面白くする活動をしている人です。

萩原さん:「最初はこくカレがやろうとしていることに賛同する市民がどこにいるか分からず、どのような呼びかけをすれば効果的か悩みました。既に活動している人ではなく、これまで活動をしていない人を見つけたかったのです。こくカレが立ち上がったのはコロナになる前の年で第2期はコロナ真っ只中。この時はすごくたくさんの方が集まりました。でも“まちづくりしよう!”という強い思いというよりは、コロナで家にいるし時間はある、今までやってこなかったからやってみようかな、という気軽な思いの人が多かったです。でも、そういった方々は都心で仕事をされていてマーケティングやデザインなど専門的なスキルがある人が多い。これは東京の郊外ならではのメリットです。“得意技を活かす場をつくって、寝に帰るだけの人たちを起こせば良い”。興味も時間もないといった人たちに少しでも“面白そうだな”と思ってもらえることが大事だと気づきました」

たくさんの人が集まった第2期開催の様子

まちづくりによくある動きとしては、取り組みに関する企画を発表しても実現せず終わる場合も多いと萩原さんは話します。しかし、こくカレの場合は、講座の途中でイベントを立ち上げるなど、良い意味での“前のめり感”があるそうです。

萩原さん:「実は2期生の中にエンタメ業界で働いている方がいてフェスの企画を立ち上げたのですが、2期生の中ではやりたい人が集まらなかったのです。しかし、多くの人が力を貸したことで実現しました。それが2025年(令和7年)に第4回を迎える“こくフェス”です」

今ではプロ・アマチュア問わず100組以上のアーティストが集まる「こくフェス」

市内約20カ所に会場が設置され、2日で訪れる来場者は約15,000人を超える

▼こくフェスの詳細はこちら
https://www.kokufes.com/

萩原さん:「“医師焼き芋”というプロジェクトは、家庭医療に携わる方々が患者さんの身体の健康、精神的な健康、社会的な健康を総合的に診ていくには診療所内では限界を感じ、まちの人と接点を持つことが重要だと考え生まれたプロジェクトです。チーム内にいた広告代理店出身の方が“医師だから医師焼き芋だ!”とひらめき名づけられました。専門性の高い2者がいたから生まれたプロジェクトのひとつです」

医師や看護師がいつもの診察室から飛び出して「芋」と「お節介」を焼くプロジェクト「医師焼き芋」

萩原さん:「“まちのタイヒ”は4期生が発案したのですが、実は講座中にプロジェクトを具体化することができずにいました。卒業後、しばらくして堆肥を作る場所が見つかったことで急に動き出したプロジェクトです。発案は4期生によるものですが、活動にはこくカレに限らないさまざまな人々が携わり、ロゴデザインは1期生の方が手掛けるなど周りのサポートが強く今も継続できています」

生ゴミになる資源を活用して堆肥を作り有機野菜を育てるプロジェクト「まちのタイヒ」。身近なところから地域循環を目指している

年間35~40名の講座参加者がいるこくカレは、これまでに200名以上の卒業生を輩出。課題がありながらもさまざまプロジェクトが生まれ、イベントも多く開催されることがまちの活性化につながっています。

こくカレをきっかけに、まちを知り楽しみたいという人が増えている

萩原さん:「理想は講座できたチームが継続した活動を行っていくこと。しかし個人で異なる熱量や、仕事や転居などのタイミングもあり“絶対にやり続けてください!”とは言えません。しかし、200名以上いるこくカレ卒業生と関わりを持てているという安心感はあると思います。都心で働いている方は普段まちにいないが故に知り合いがいないので、フラッと出会った時に挨拶ができる関係をつくることに喜びを感じている方もいます。そういうライトな関係構築を求める思いも、まちが良くなる第一歩だと思っています」

▼2024年(令和6年)度のこくカレの様子はこちら
https://www.city.kokubunji.tokyo.jp/kurashi/koutsuu/jourei/1032402.html

地域の人が交流できる場所や機会を提供し、居心地の良いまちを目指す

さまざまな催しや活動によって賑わいを見せる国分寺。最後に萩原さんが思う“健全なまちの在り方”について質問してみました。

萩原さん:「人が交流でき、まちに知り合いができる、そういう場所や機会が増え、それぞれが自由に振る舞える居心地の良い状態が良いまちだと思っています。例えば不登校の子どもや道路拡張・整備など、まちによって課題はいろいろありますが、それを解決すれば良くなるのかというと、そうではないと思うのです。まちに関わる人たちがどれだけいるか?まちに愛着を持っている人がどれだけいるか?そこを増やすことが良いまちづくりに必要だと思います。なぜなら国分寺に限らず、たまたまそのまちに住んでいるという人が大半です。でも、例えば、まちに点在する公民館や図書館などを活用し、行政地区の垣根を越えた地域のつながりができると、多世代が交流できて良いまちになっていくのではと思います」

最近萩原さんが注力しているのが庭の活用。庭の手入れをしていると近所の人が立ち寄り、自然と会話が生まれるという。ゆくゆくは複数の庭つなげ、緑を楽しみながら、人がつながるまちにしたいと話す

そうした地域での交流は自由な雰囲気を持ち、また、経済合理性ではない人とのつながりが、まちに良い影響を及ぼしていると萩原さんは話します。

萩原さん:「こくカレに入って地域につながりを持った卒業生の中には、飲食店を立ち上げた方もいます。魅力的な個人店が増えること、雇用が増えて仕事が生まれると出稼ぎに行く必要がなく、まちに魅力的な人が集まりますよね。それが持続的で健全なまちの在り方ではないでしょうか」

2023年(令和5年)11月に開業した「喫茶ソラクラゲ」。店長の稲垣菫さん(左)はこくカレ第4期卒業生

こくカレは2025年(令和7年)度も参加者を募集予定。そして、市内在住でなくても参加することができます。また、講座に定期的に通うことは難しくても、受講生や卒業生が立ち上げたさまざまなプロジェクトを通じて、国分寺のゆるく楽しい雰囲気を感じることができるはず。自分が住むまちを考え、過ごしやすいまちづくりを行う国分寺の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

こくカレ6期終了時の写真

スポット等詳細情報

こくぶんじカレッジ

全7回(7月~12月)
受講料無料
URLhttps://www.instagram.com/kokucolle/
問い合わせ:国分寺市まちづくり部まちづくり推進課(042-325-0111)

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