【国分寺お店大賞】創業40年越えの町中華、「オトメ」が地域に愛される理由
【オトメ 店主】落合芳光(おちあいよしみつ)さん

目次
研究熱心なオーナーシェフ・落合さんとベテラン料理人が腕を振るう町中華
JR国分寺駅南口から徒歩約3分。駅前の大通りから少し路地を入った先にあるのが、1986年(昭和61年)創業の「チャイニーズレストラン オトメ」。店主は36歳でこの店を始めたという落合芳光(おちあいよしみつ)さん。その傍らには、まるで家族のような信頼関係で結ばれている2人の料理人がいて、さらにディナータイムには1986年のオープンから共に働くフロアマネージャーの木村孝司さんという大ベテランがお客さまを迎え、店は彼らが醸し出す優しくアットホームな雰囲気に包まれています。

中央が店主の落合芳光さん。右は佐伯慶次さん、左は五十嵐健さん
話を聞くと、料理人の2人は15歳と22歳からこの店に入り、50歳になる現在までずっと片腕として働いてきたというベテラン中のベテラン。「オトメ」が常連客に愛される理由のひとつに「いつ来ても昔から変わらないベテランスタッフがいる安心感があるからでは」と落合さんは微笑みます。

店に飾られていた常連客が撮影した写真からも店の歴史を感じ取ることができる

今から約25年前に、店を卒業したスタッフも含めてみんなで旅行へ行った時の写真
そんな「オトメ」は「国分寺お店大賞」で殿堂入りを果たしている1軒。「国分寺お店大賞」とは、国分寺市内の個性的で魅力ある店を発掘し、さらなる魅力向上や地域の活性化を図ることを目的に2018年度から始まった事業で、市民投票で選ばれた受賞店を「飲食部門」と「小売・サービス部門」に分けて毎年発表しています。「オトメ」は2021年と2023年で「飲食部門」グランプリを受賞したことで殿堂入りになりました。地域に愛され、多くの人から支持を得ている店だということが分かります。
「国分寺お店大賞」について
https://www.kokubunji-omisetaishou.jp/
可愛らしい店名を付けた「オトメ」の歴史と、落合さんが大切にしていること
36歳で国分寺駅前に「オトメ」を構えた落合さんは、実は両親と共に創立した東京都文京区・根津にある「中華料理オトメ」の出身。前身は、戦後間もない頃に落合さんの父親がパン職人として働いていた「オトメパン」でした。当時は珍しかった西洋のパンの焼き方を、進駐軍基地で講習を受けて技術を取得し、配給制だった小麦粉を店に持ち込む人々のパンを焼いたり、官庁や学校に配達するなどしていたそうで、今でも当時を懐かしがるご年配の方々がいるとのこと。「オトメ」という店名は「オトメパン」からそのまま受け継いでいます。「オトメパン」は後に中華料理専門「中華料理オトメ」となり、大人になった落合さんは両親と共に15年ほど働いて新たな店の基盤を作り、弟さんにその店を任せてから自分の店を構えようと探して行き着いたのが国分寺でした。

「下北沢や明大前、中野、荻窪、吉祥寺…候補地は他にもあったけれど、どこも高かった。ダメだと思った時に入った阿佐ヶ谷の小さな不動産屋で相談して見つけたのがここ。当時は一戸建ての中華料理屋は珍しくて、そこも気に入った」と落合さん
では、根津を出てからすぐに国分寺へ行き着いたのかというと、そうではないのが面白いところ。実は一度中華料理の世界を離れて京都で5年間、手描き友禅の世界に飛び込んだそうです。落合さんはもともと芸術、特に日本画に興味を持っていたこともあり(好きなのは尾形光琳・長谷川等伯・伊藤若冲)、京都では色彩などの勉強に注力しました。そのような経験が生かされているのが「オトメ」の料理を引き立てる色とりどりの料理皿。使う器は中華皿に留まらず、洋皿やイタリア料理屋で出てきそうな鮮やかな柄の皿も使っているので、ぜひ注目してみてください。

1種類につき2~3枚しか用意がないという「オトメ」のバリエーション豊かな食器
そして、落合さんが作る料理は、料理上手だったという父親の影響を受けた“手作り”にこだわる中華。例えば餃子はたくさんのキャベツ、白菜、ニラと、挽肉10kg以上を大きなボウルに入れて2人がかりで混ぜ合わせるという昔ながらのやり方。そうすることでしか出せない味があると言います。さらに地方や京都の町中華からホテルの高級中華までを食べ歩いて研究した料理や調理法を駆使しています。イギリスから中国に返還される前の香港で食べた高級中華や翡翠チャーハン、友人が札幌で研究して一番美味しかったという味噌ラーメン…。大衆食堂から高級レストランまで、さまざまな料理を研究して腕を磨き、「どの料理も自分にとって十八番の料理にしていかないといけない」という思いで料理と向き合っています。

落合さん曰く「料理は、塩加減・火加減・そして愛情」。40年以上の経験がありながらも「今でもチャーハンを料理する時はまっすぐ向き合い、おいしくなぁれと祈りながら鍋を振ります」と話す
あれも、これも、すべてにファンがいる、「オトメ」の人気メニューを教えて!
歴史とこだわり、職人技と愛情がたっぷり詰まった「オトメ」の人気メニューを聞くと、あれも、これも、それも…全部人気!との答え。さすが「すべてを十八番」にいうのも頷けます。セレクトに迷いながらも、今回は“初めて「オトメ」に行くなら食べてほしい7品”をピックアップしました。

「五目野菜やわらかい焼きそば」
まず1品目は「五目野菜やわらかい焼きそば」。麺はサッと軽く茹でた後に鉄板で両面を焼いて、その上に鶏ガラと豚の骨から抽出したスープで作る、あんかけ野菜がたっぷりかかっています。「五目」と言いながら19種類の食材を使っていて、少食の方なら2人前ほどのボリューム。必要以上に火を入れすぎないプリプリのエビとイカ、カリッと揚がった鶏の唐揚げ、珍しい食材としてはキュウリやくわいなど、色とりどりの野菜が盛られています。

「チンジャオロースー(牛肉とピーマンの細切り炒め)」
仙台黒毛和牛A5ランクのサーロインステーキを贅沢に使った「チンジャオロースー」。中華鍋から火柱が上がるほど豪快な火の中で炒めながらも、牛肉に焦げ目はなくピーマンはパリッとした食感を残すようにしています。一般的なチンジャオロースーよりもあっさりとした味付けになっているので、ご年配の常連客からも人気の一品です。

「春巻き」(一皿2本)
「チンジャオロースー」とはまた違った、でも絶妙な火入れ加減で、餃子に並ぶ人気点心が「春巻き」です。具はしいたけ、長ネギ、さやいんげん、タケノコ、キャベツ、群馬県産ブランド肉と具だくさんながらも肉が多めなので食べ応えがあります。15分ほどじっくり時間をかけて火を入れることで冷めてもパリパリをキープしているため、テイクアウトもおすすめです。

「スブタ」
「他の店にはない味」と話す落合さん渾身の一品が、酢豚通のお客さまから人気を集める「スブタ」。食感が良くなるよう2度揚げしたやわらかい豚肉と彩り野菜に合う甘酢のタレをたっぷりと絡めて食べることで、その良さをより実感できます。

「ホウレン草チャーハン」
ホウレン草が旬を迎える時期に登場するのが、香港で食べた翡翠チャーハンをヒントに翡翠色に仕上げた「ホウレン草チャーハン」。たっぷりの油を熱した鍋で卵とご飯を塩・胡椒・調味料だけのシンプルな味付けで炒め合わせ、最後に刻みほうれん草を加えて素早く炒め合わせることで鮮やかな緑色のチャーハンに仕上げています。

「天津丼」
全国丼連盟が日本全国の素晴らしい丼を多くの人に伝えることを目的に開催する「全国丼グランプリ」第8回(2021年)中華丼部門で金賞を受賞した「天津丼」。ズワイガニの旨み、白髪ねぎのシャキシャキとした食感、とろみのきいたさっぱりとした甘酢餡との相性が抜群の一皿。塩味か甘酢味を選ぶことができます。(写真は甘酢味)

「水餃子」
最後は、メニュー表には掲載されていない常連のみが知る裏メニューを特別に紹介。それがこの「水餃子」です。予約した方への特典として提供している1品で、たっぷりのセロリと挽肉のみで作られたシンプルながらも一口かじればセロリの旨みが広がり、セロリが苦手な方にも喜ばれる茹で餃子です。

地域に愛される店がゆえ、ゆっくり食事を楽しむ方が多く、予約は必須
この他にも少量から食べられる中華小皿や点心、セットメニューやランチメニュー、9種類も揃うチャーハン、大人気の「レバニラ炒め」やデザート「杏仁豆腐」など、メニューバリエーションが多い「オトメ」の中華料理。国分寺の歴史に欠かせない名店の味をぜひ、体験してみてください。
店舗情報
チャイニーズレストラン オトメ
住所:東京都国分寺市南町3-13-10
電話:042-326-0678
駐車場:なし
URL:https://soh.sci-kokubunji.jp/shop/otome
アクセス:JR中央線・西武国分寺線・西武多摩湖線「国分寺駅」南口徒歩3分
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