農がくらしのそばにある「清水農園」「鈴木農場」
100戸以上の農家が存在し、まち中に「農ある風景」が今も多く残る国分寺。約300年前、水が乏しく荒地だった市内北部は玉川上水が引かれたことにより農地として開墾されました。家の間口から南北に開墾して農地を広げていったので、この辺りには細長い短冊型農地が多く見られます。
目次
食べる人を近くに感じる国分寺の農業
北町にある清水農園は家族で営む都市型農業の農家。育てた野菜は主に併設の直売所で売り切るといいます。あまり機械を使わずに手作業で行い、敷地内の落ち葉と東京農工大学の馬術部から提供されるウマの糞などを混ぜた自家製堆肥を使って、循環型農業に取り組んでいます。作る野菜は少量多品目で、年間に約100種類ほど。特に数種類の葉野菜が入ったサラダセットが大人気です。晩秋から冬にかけての実り豊かな畑では、人参やカブ、赤や緑の珍しい大根などの根菜がたくさん採れます。清水農園の清水雄一郎さんお勧めの食べ方は、蒸し野菜のバーニャカウダ。採れたて野菜の素朴な美味しさを色々と味わえます。

清水農園の清水雄一郎さん
清水さんの家族が販売に立つ直売所には、新鮮な野菜を求めて近所の方々が次々と立ち寄ります。食べ方を聞いたり、世間話をしていったりと、地域の人たちに愛される憩いの場になっています。「最近はうちのSNSを見た方もよく来ますね。『朝みょうがが採れました』と上げると、それを見てその日の内に買いに来る方もいて。旬のものって引きが強いですね」と清水さん。

清水農園の有人直売所
清水農園は地場野菜を市内の飲食店で食べてもらう取り組み「こくベジプロジェクト※」に10年前から参加し、野菜を毎週出荷しています。「こくベジをやって変わったのは、飲食店の方達とつながりができたこと。「『このナスをこうやって料理して出したら、お客さんがすごく喜んでくれた』など飲食店やその先にいる消費者の反応を知れるので、やりがいを感じますね。やりがいって一次産業の人にとって、とても大切なんです。天候の影響で出荷まで季節ごとに大変さがあるけれど、楽しみにしている人がいるからサボることなくがんばろうと。モチベーションが高まるんですよ」。

ナスの手入れをする清水さん
「今後やりたいことはただ野菜を作って売るだけじゃなく、土いじりをやりたい人に場を提供したり、オープンファームをやったりして、そういう面から国分寺を盛り上げていきたいです」と清水さんは将来の希望を語ってくれました。
「国分寺の畑を未来に残したい」と思ってもらうために
鈴木農場は清水農園のお隣に位置する農家さん。家族と数人の援農ボランティアで年間60種類ほどの野菜を育てています。併設する直売所の他、こくベジ便、地元のスーパーなどで販売しています。「肥料にはかなりこだわっていますね。八王子の磯沼牧場から運んできたコーヒー堆肥※を、さらに置いて二次発酵させて使っています」と話すのは、鈴木農場の鈴木雅之さん。そのせいか、野菜は比較的ジャンボなのが特徴。お得感があって、買う際に喜ぶ飲食店の方も多いそうです。

鈴木農場の鈴木雅之さん
鈴木家で人気の野菜の食べ方は、ズッキーニのフライ。パン粉を付けて揚げると甘くなり、皮まで食べられて美味しいのだとか。また白ナスを半分に切り、中をくり抜いて他の野菜と和えて戻し、チーズを乗せてオーブンで焼くグラタン風の一品もおすすめだそうです。
鈴木さんはこれまで、地域の人と関わりながら様々な活動をしてきました。そのひとつが、母校の小学生を対象にした学童農園です。種蒔きから収穫まで野菜作りを授業の一環として体験してもらうもの。「始めてからもう20年経ちます。すっかり大人になった子に近所で声をかけられて、驚くこともあるんです。こういうまちの中に畑がある環境を子ども達に知ってもらい、これからも残していきたいと思ってもらえるように活動を続けています」と鈴木さん。

鈴木農場のさつまいも畑
国分寺・北町の農地で “日帰りキャンプ”イベントが体験できる
鈴木農場では天体観測、ひまわり迷路、焚火ワークショップ、タケノコ掘りパーティなど、大人も子どもも楽しく交流できる催しもたくさん企画してきました。
2026年11月23日には鈴木農場をメイン会場に、 日帰りキャンプ「土と宙、くらしの冒険」イベントも行うとのこと。畑で土にふれ、料理を作って、食べて、火を囲む――そんな体験を味わえるといいます。
「火起こし講座や天体観測は私が講師を務めます。麻ひもをほぐしてファイアースターターで火を付け、最後はマシュマロを焼いて。その他、冒険遊び場の会のプレイリーダーと基地づくりをしたり、辻調理師専門学校東京の先生と生徒と一緒にピザづくりをしたり。楽しい計画がたくさん盛り込まれていますよ」と鈴木さん。
鈴木さんにさまざまな活動の原動力を伺うと、「農家って、意外と農業関係以外の関りが少ないので、色々な経験をしてきた方達に会ってお話を聞くのが楽しいんです」と笑顔で話してくれました。

一面に広がる緑豊かな畑の風景、新鮮な野菜が近くで手に入る環境。身近で当たり前だとか思っていることが、どれだけ豊かで貴重なことなのか。このまちの農をどうやって残したらよいのかと考える時、まずはそれを営む人の存在をより知ることが始まりなのかもしれません。



上から清水農園の柿、鈴木農場のオクラ、鈴木農場の赤ピーマン
※こくベジプロジェクト
https://kokuvege.jp/
※コーヒー堆肥
コーヒーかすを主原料に微生物の力で発酵・分解させた堆肥。土壌改良効果、 消臭・虫除け効果がある。
〇清水農園Instagram
https://www.instagram.com/shimizu_ya31/
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